Industry Monthly
2026年7月 業界マンスリー
Pharmaceutical industry, this month
医薬品業界の政策・市場・技術の動きを、公開情報をもとに毎月まとめてお届けします。
制度・薬価
骨太方針2026閣議決定、創薬・先端医療を戦略分野に明記
2026年7月21日、政府は「経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太の方針2026)」を閣議決定した。創薬・先端医療が成長を支える重要分野として位置付けられ、新薬の初収載時における適切な価値評価およびイノベーションをさらに評価する方向性が明記された。米国のMFN(最恵国待遇)価格政策を踏まえ、必要な医薬品の確実な上市環境整備にも言及し、薬局機能・薬剤師の役割強化も原案から追記された。
出典: 日本製薬工業協会(JPMA)公式リリース・ミクスOnline・薬+読Expertの視点
イノベーション評価の強化は、ドラッグラグ・ドラッグロスに悩む患者にとって新薬アクセス改善の福音になり得る。しかし「評価強化」の具体的制度設計が薬価の具体的数値に落とし込まれるまでは、製薬企業の日本優先開発判断を変えるには至らないという構造的緊張関係が続く。
製薬協会長、骨太2026を評価しMFN対応とイノベーション制度設計を要請
2026年7月30日、日本製薬工業協会(製薬協)は会長会見を開催し、7月21日閣議決定の「骨太の方針2026」に対する評価と今後のビジョンを発表した。会長の宮柱明日香氏は、国民の健康と命を守り日本経済の成長に貢献する内容が幅広く反映されたと高く評価した。米国のMFN価格政策を踏まえてもなお日本国内で新薬の上市が継続的に促進される環境の確保を求め、特許期間中の医薬品の初期薬価をGDP調整後の米国価格水準に引き上げるべきとのPhRMAの提言とも連動した議論が展開された。
出典: MIL Online(医薬産業オンライン)Expertの視点
MFN価格政策という外圧を奇貨として、製薬協が薬価引き上げ要求を国際標準比較で正当化した点は戦略的だが、患者にとっては保険財政圧迫による自己負担増という逆のリスクも内在する。「イノベーション評価」と「保険の持続可能性」の二律背反を、現場薬剤師・医師も含めた多職種で議論する場が不足している。
骨太2026に薬局・薬剤師の役割強化が原案から追記、地域健康増進を明文化
2026年7月21日に閣議決定された「骨太の方針2026」では、6月30日公表の原案と比較して、「攻めの予防医療と疾病対策」の項目に「地域住民の健康増進に資する薬局機能および薬剤師の果たす役割の強化」が新たに追記された。薬剤師・薬局が医療提供体制の中核として位置づけられる方向性が国策文書に明記されたことは、調剤報酬改定の議論に直結する重要な政治的シグナルとなる。創薬・先端医療イノベーション分野では、MFN価格政策下でも必要な医薬品の上市環境整備が盛り込まれた。
出典: 薬剤師のエナジーチャージ 薬+読Expertの視点
「薬局機能・薬剤師の役割強化」の明文化は、患者が地域で受けるヘルスケアサービスの質を底上げする可能性を持ち、かかりつけ薬局の普及にも追い風となる。しかし「役割強化」が実質的な報酬評価や業務範囲拡大に結びつくかどうかは今後の中医協審議次第であり、精神論に終わらせない制度的裏づけが不可欠だ。
ICH M15ガイドライン、7月23日に日本で法的発効—AI創薬規制の新たな基準軸
国際医薬品規制調和会議(ICH)のM15ガイドライン(モデルに基づく薬物開発・審査に関するガイドライン)が2026年7月23日に日本で法的に発効し、AI・モデルを活用した創薬・開発における規制の基準軸が明確化された。同時期にPIC/S Annex 22ドラフト(生成AIのクリティカルGMP用途を実質禁止)も公開されており、AI創薬の「実装期」に向けた規制環境が急速に整備されつつある。製薬企業・バイオベンチャーにとっては、AI活用の承認申請戦略を根本から見直す転換点となる。
出典: Pharma Insight Lab(AI創薬2026規制動向まとめ)Expertの視点
ICH M15の発効は、AI創薬の規制ブラックボックスを解消し始める第一歩であり、患者にとっては安全性・有効性の科学的根拠がより堅固な新薬の供給につながり得る。ただし規制基準の明確化は同時に参入ハードルを上げ、資金の少ないスタートアップや中小製薬の創薬機会を狭める可能性があるという両刃の剣でもある。
市場・経営
卸大手4社、2027年3月期の営業利益率は過去5年最低の見込み
2026年7月15日付のAnswersNewsの報道によると、医薬品卸大手4社(メディパルHD・アルフレッサHD・スズケン・東邦HD)の2027年3月期の営業利益率は前期比0.11ポイント減の1.19%と、過去5年で最低の水準となる見込みである。毎年の薬価改定に加え、物価高・人件費・物流コストの上昇が重なり、2026年3月期も4社すべてが増収ながら営業減益となった。各社は本業での利益確保に取り組むほか、メディパルHDがPALTACの完全子会社化(TOB期間:2026年5月12日〜7月7日)によるグループ再編、スズケンがフィー・ビジネスの本格化など新規収益源の多角化を加速している。
出典: AnswersNewsExpertの視点
卸の利益率低下は流通コスト転嫁の限界を示しており、最終的には医薬品の安定供給や配送サービス水準が患者に影響するリスクを孕む。1%台の薄い利益率の中で多角化・再編が進む構造は、卸が「社会インフラ」であるという本質と「民間事業体」であるという現実の緊張関係を改めて浮き彫りにしている。
塩野義製薬、2026年7月に第1四半期決算開示—ViiV持分法適用後の業績構造を説明
塩野義製薬は2026年7月17日に決算説明資料を公表し、ViiV Healthcare社の持分法適用会社化(持分比率21.7%)後の業績構造を詳細に説明した。2026年度の税引前利益は2,200億円(前年比▲7.9%)を見込む一方、2027年3月期以降にViiVからの配当増がキャッシュフローを強化する見通しを示した。HIV分野の長時間作用型LAI製剤展開と米国でのRadicava(エダラボン)事業開始が中期成長の両輪として位置づけられた。
出典: Smart Stock Notes(塩野義製薬 決算説明資料まとめ)Expertの視点
ViiVを通じた超長時間作用型HIV薬(年2回投与可能性)の実用化が進めば、服薬アドヒアランス問題を抱えるHIV患者の生活の質を根本的に変え得る。ただし21億ドル超の出資に伴う財務負担と、国内感染症薬の安定供給投資の両立が経営上の核心的緊張点となる。
※ 本レポートは公開情報をもとにYap株式会社が編集したものです。「Expertの視点」はCEO 山本正也(NewsPicks Expert)による見解です。各項目の詳細は出典元をご確認ください。
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